札幌地方裁判所 昭和61年(わ)121号 判決 1986年5月29日
本籍
北海道美唄市字美唄二六六五番地
住居
札幌市豊平区中の島一条一丁目二番二五号
旅館経営
古屋敏雄
昭和二年二月一五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官北原一夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金一〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、札幌市豊平区中の島一条一丁目二番二五号において、「ホテル一位」の名称で旅館業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、宿泊料等の売上げの一部を除外するなどの方法によりその所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五七年分の実際総所得金額が三〇一〇万〇〇七九円であり、これに対する所得税額が一一九〇万七八〇〇円であるにもかかわらず、昭和五八年二月二二日、札幌市豊平区月寒東一条五丁目三番四号所在の所轄札幌南税務署において、同税務署長に対し、昭和五七年分の総所得金額が二〇八万〇三〇九円であり過年度分の純損失の繰越額を控除すると、所得金額は零であり、すでに源泉徴収されている税額一万九〇九八円の還付を受けることとなる旨の内容虚偽の確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年三月一五日を徒過させ、もって、不正行為により昭和五七年分の正規の所得税額との差額一一九二万六八〇〇円を免れ、
第二 昭和五八年分の実際総所得金額が三二四三万一四三七円であり、これに対する所得税額が一三二〇万六〇〇〇円であるにもかかわらず、昭和五九年二月二四日、前記札幌南税務署において、同税務署長に対し、昭和五八年分の総所得金額が一四六万六八三八円であり、過年度分の純損失の繰越額を控除すると、所得金額は零であり、すでに源泉徴収されている税額一万四九九四円の還付を受けることとなる旨の内容虚偽の確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年三月一五日を徒徒過させ、もって、不正行為により昭和五八年分の正規の所得税額との差額一三二二万〇九〇〇円を免れ、
第三 昭和五九年分の実際総所得金額が三九七一万二〇七三円であり、これに対する所得税額が一七三九万八四〇〇円であるにもかかわらず、昭和六〇年三月一一日、前記札幌南税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年分の総所得金額は四七万六七二六円の欠損であり、すでに源泉徴収されている税額一万二一五九円の還付を受けることとなる旨の内容虚偽の確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年三月一五日を徒過させ、もって、不正行為により昭和五九年分の正規の所得税額との差額一七四一万〇五〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
判示全事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通及び大蔵事務官に対する質問てん末書七通
一 古屋ユリ子の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書
一 検察官作成の電話聴取書
一 大蔵事務官作成の売上調査書、期首商品棚卸高調査書、期末商品棚卸高調査書、租税公課調査書、青色申告控除額調査書、不動産所得調査書、利子所得調査書、純損失の繰越控除額調査書、純損失の金額調査書
一 被告人作成の所得税の修正申告書謄本
一 大蔵事務官作成の差押てん末書
一 押収してある収支計算書綴一綴(昭和六一年押第一〇一号の一)及び確定申告書決算表綴一綴(同号の2)
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の昭和五七年分の脱税額計算書
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の昭和五八年分の脱税額計算書
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の昭和五九年分の脱税額計算書
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、右各罪につきそれぞれ所定の懲役と罰金とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び罰金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一〇〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとするが、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 嶋原文雄)